どんな君でも愛してる
　瑠璃は、頭ではそんなことを考えるが、体を動かし、手を動かし、演奏人の顔を作っていく。

「よし、これで完璧！」

　今日は、自分の瞳と同じ色の、エメラルドグリーンのハイネックのドレスにした。

　少しばかりの装飾をし、靴はあまり高くない三センチヒールにしたが、瑠璃にはあまり靴は関係ない。

　弾くときは、靴ははかずに、ペダルを素足で踏むスタイルが瑠璃流だからだ。

　着替えて控え室から出ると、barカウンターの中に、異様にオーラを放つ若い男性がいた。

「……君、新しいピアニスト。」

　声を聞いたとき、一瞬先程の男性の声のように聞こえるが、すぐに思い直した。

　助けてくれた彼は、黒髪だった。

「キョウだよ。よろしく。」

　その男は、キラキラとしたブロンド色の髪でキッチとセットしている。体格も似ているように思うが、この髪の色のならば気がつかないのはおかしい。瑠璃は、よろしくと微笑んで、頭を切り替える。

　まだ、オーナーの安堂と、このキョウにしか会っていないが、自分の裏の仕事をきっかりしなければならないと、自分を奮い立たせた。
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