誰かのための物語
ドンッ、と音が鳴り、放たれたボールは相手ゴールの左上に吸い込まれた。ネットが大きく揺れる。


「ピーッ!」


 審判の笛が晴れ渡る空に響いた。

わっと、チームの歓声が湧いた。

 
僕はたくさんの仲間にもみくちゃにされた。

すげーよ、

やったな、

ナイスシュート。


そんな声をかけられながら。


試合でゴールを決めたのは、これが初めてだった。


自分の蹴ったボールがゴールに吸い込まれていくのを見るのも、

仲間に声をかけられることも、

身体が震えるほどの喜びに満たされることも、


全部、初めて。
 

今までは、自分がゴールを決めるなんて、考えたこともなかった。

それは自分の役目ではないと思っていたのだ。


 
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