誰かのための物語
「じいちゃんは、父さんと母さんがいなくなって悲しくないの?」

拝み終わった僕は、ずっと気になっていたことをじいちゃんに聞いてみた。

じいちゃんは僕に向き直り、笑いながら、でも、真剣に答えた。


「そりゃ悲しいさ。

もっと長生きしてほしかった。

愛する息子と娘だもの。

でもな立樹。
じいちゃんには、心の用意があった。

だから、必要以上に悲しむ必要がなくなったんだ」


「心の用意? それって、どういうこと?」


 僕が聞くと、じいちゃんはあごひげをさすって口を開いた。

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