誰かのための物語
「……そうだな。

それに答える前にまず、立樹に聞こう。

人はなんのために生きてると思う?」


……それは、かなり難しい問いだ。

僕は必死に考え、ひとつの答えを口にした。



「幸せになるため?」

 じいちゃんは頷いた。


「うん。立樹の答えは、正しい。

人間は幸福をどこまでも追求する生き物だ。

でも、それは完全な回答ではないと、じいちゃんは思う。

人生において約束されているものがひとつしかない限りな」


じいちゃんが立てている人差し指を見つめながら、
僕は首をかしげる。


「約束されているもの?」


「人間全員に約束されているものだ」


 僕は、腕組みをして考えた。考えるが、答えが浮かばない。

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