誰かのための物語
3
だんだん気温も上がってきた。今日は、日曜日。待ちに待った瞬間がやってきた。
「もう骨はくっついてるから大丈夫だけど、動かしたりするのにはまだ痛みを伴ともなうだろうね。ボールを持ったり投げたりっていうのは、様子を見ながらにしてね」
整形せいけい外科げかの先生は、涼しい顔で僕の右手に刺さっていたワイヤーを抜きながら言った。するすると僕の手から銀色の長い棒が顔を出していく。意外と、痛くはない。
「わかりました」
先生にお礼を言って、診察室を出る。そして、両手でガッツポーズを作った。
ギプスが外れた。これでようやく、練習にも参加できる。右手でご飯が食べられる。着替えの時間が早くなる。お風呂に全身浸かることができる。右手で字や絵が書ける。
今回利き腕を怪我したことによる不便さは想像以上で、そのストレスが募っていた。その分、今日ギプスが外れたときの喜びや解放感は大きなものだった。
先生はボールを持ったり投げたりすることを控えたほうがいいと言っていたけれど、サッカーで手を使うときと言えばスローインのときくらいなので、骨がくっついているなら多少痛くても問題はない。
僕はやる気満々だった。右手でグーとパーを交互に作り、手の感覚を確かめると、少しだけ痛みを感じた。
「もう骨はくっついてるから大丈夫だけど、動かしたりするのにはまだ痛みを伴ともなうだろうね。ボールを持ったり投げたりっていうのは、様子を見ながらにしてね」
整形せいけい外科げかの先生は、涼しい顔で僕の右手に刺さっていたワイヤーを抜きながら言った。するすると僕の手から銀色の長い棒が顔を出していく。意外と、痛くはない。
「わかりました」
先生にお礼を言って、診察室を出る。そして、両手でガッツポーズを作った。
ギプスが外れた。これでようやく、練習にも参加できる。右手でご飯が食べられる。着替えの時間が早くなる。お風呂に全身浸かることができる。右手で字や絵が書ける。
今回利き腕を怪我したことによる不便さは想像以上で、そのストレスが募っていた。その分、今日ギプスが外れたときの喜びや解放感は大きなものだった。
先生はボールを持ったり投げたりすることを控えたほうがいいと言っていたけれど、サッカーで手を使うときと言えばスローインのときくらいなので、骨がくっついているなら多少痛くても問題はない。
僕はやる気満々だった。右手でグーとパーを交互に作り、手の感覚を確かめると、少しだけ痛みを感じた。