誰かのための物語
しばらくすると、かおるくんがトトト……と走って戻ってきた。


「これ!」


……かおるくんが両手で差し出したノートには、確かに見覚えがあった。


でも、僕が思っていたものではない。


「え、なんで……なんでこのノートを、彼女が?」


「ずっとまえにぼくにくれたんだよ。


かのちゃんのたからもの。


だからずっと、だいじにしてるの」


そのノートの表紙には、こう書かれていた。








ーー【だれかの】、と。

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