誰かのための物語
ノートがなくなってしまってから一週間ほどたったある日。

私は、机の中にノートの切れ端が入っているのを見つけた。

そこには、

【としょしつ みぎおく ほんだな 
いちばんうえ はしっこ】

と書かれていた。


新手のいたずらだろうか、とも思ったけれど、なぜかその字からは人を騙そうとするような悪意を感じなかった。


とても丁寧で、繊細な字。

はねやはらいが力強いけれど、少し小さく、どこか丸っこくもある。

男子の字にも、女子の字にも見えた。


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