誰かのための物語
「それにこの物語は、僕にとっては他人事には思えないんだ。

だから僕は、この物語に絵を描きたいと思った」


この言葉を聞いて、私はずっと聞いてみたいと思っていたことを尋ねてみた。


「じゃあ……その人が、誰か知りたい?」


「え? ……う、うん。

そりゃ知りたいけど、どうやって知るの? 

名前も書いていないんだし、その人も知られたくないのかも……」


彼は、少なからず動揺している様子だった。

もしかしたら私がここで「それは私だよ」なんて言うと思ったのだろうか。


気付いていないふりをする日比野くんの前で、直接そうは言えなかったけど、私には考えがあった。

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