誰かのための物語
あるとき私は、

彼に『私がものを隠されたりすると次の日わかりやすいところに置いてあったりするんだけど、これは誰がしてくれてるんだろうって気になってるん
だ』


と「カマ」をかけてみたことがある。


彼は困った表情をしてから、ちょっと考えるそぶりをして、それから、

『持ち物に【だれ】って書いとけばその人も答えてくれるんじゃないかな』

と冗談ぽく言った。


そこまで言ってはぐらかそうとするのか。

そう思って私は少し呆れたけれど、それよりも彼が私に冗談を言ってくれたことが嬉しかった。


なんだか、心を開いてくれているみたいで。


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