誰かのための物語
5
私たちの別れは唐突に決まった。
理由はシンプルだった。
私の病状がまた悪化したから、病院の近くに引っ越すため。
もちろん、立樹くんにそれを一番に伝えた。
と言ってもほかに伝える人なんていないのだけど。
彼は、じゃあそれまでに絵本を完成させなきゃね、と笑顔で言った。
あの事件があってから、クラスメイトは私だけでなく彼からも離れていった。
私は、彼に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
でも、私が謝ると彼はこう言った。
『華乃は、なにか悪いことをしたの?
してないでしょ。だから、謝らないで。
それに、華乃のことを悪く言う人のこと、僕は好きじゃない。
だからいいんだ、これで』
立樹くんの言葉には不思議な力があった。
私のことを包み込んでくれるような温かさ。そしてそれは、笑顔にも。
本人は自覚がないようだけれど、普段は無表情が多いから、
笑顔を見せてくれたときの喜びは大きい。
理由はシンプルだった。
私の病状がまた悪化したから、病院の近くに引っ越すため。
もちろん、立樹くんにそれを一番に伝えた。
と言ってもほかに伝える人なんていないのだけど。
彼は、じゃあそれまでに絵本を完成させなきゃね、と笑顔で言った。
あの事件があってから、クラスメイトは私だけでなく彼からも離れていった。
私は、彼に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
でも、私が謝ると彼はこう言った。
『華乃は、なにか悪いことをしたの?
してないでしょ。だから、謝らないで。
それに、華乃のことを悪く言う人のこと、僕は好きじゃない。
だからいいんだ、これで』
立樹くんの言葉には不思議な力があった。
私のことを包み込んでくれるような温かさ。そしてそれは、笑顔にも。
本人は自覚がないようだけれど、普段は無表情が多いから、
笑顔を見せてくれたときの喜びは大きい。