誰かのための物語
放課後、私たちは公園で会った。


また、彼のほうが早く着いていた。

今度は、立樹くんのほうから手を振ってくれた。

立樹くんの少し寂しげな笑顔を見て、胸が苦しくなった。


寂しい気持ちがいっぱいに広がる。


でも、なるべく明るい笑顔を作って前より大きめに手を振って彼のもとへ向かう。


ベンチに座ると、彼はあのノートを取り出して私に渡した。



「終わったよ」

「うん、ありがとう」


彼は、最後の絵を描き終えて、持ってきてくれた。

私たちの絵本が、完成したのだ。


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