誰かのための物語
第1章 イルカ
1
四月の初め、妙にリアルな夢を見た。
僕は教室の中にいた。クラスメイトらしき人たちはざわつき、落ち着かない様子だ。ロッカーの中にランドセルがあったから、小学校だろう。
それは、クラスに転校生がやってきたという夢だった。
彼女は細身で、頬を赤らめていた。緊張している様子だったけど、口元には微笑みを浮かべていて、やわらかい雰囲気の女の子だった。
彼女とは初対面のはずだけど、僕はなぜだか懐かしさを感じていた。綺麗な瞳の輝きに、見覚えがあった。
その夢の中で僕は小学六年生だった。【卒業まであと何日】というカウントダウンをする掲示物があったからわかった。黒板には【進級おめでとう】と書いてあるから、おそらく一学期の始業式なのだろう。
春の優しい風が教室の窓から吹いていた。その風にのって、桜の花びらが一枚入り込む。
転校生の女の子は、僕の左隣の席に座った。左側二列目の、一番後ろ。
よろしくね、でもなんでもいいから声をかけて緊張をほぐしてあげろよ、などと夢を見ている僕は思ったが、夢の中の僕はただ、ノートの隅に絵を描いていたのだった。
僕は教室の中にいた。クラスメイトらしき人たちはざわつき、落ち着かない様子だ。ロッカーの中にランドセルがあったから、小学校だろう。
それは、クラスに転校生がやってきたという夢だった。
彼女は細身で、頬を赤らめていた。緊張している様子だったけど、口元には微笑みを浮かべていて、やわらかい雰囲気の女の子だった。
彼女とは初対面のはずだけど、僕はなぜだか懐かしさを感じていた。綺麗な瞳の輝きに、見覚えがあった。
その夢の中で僕は小学六年生だった。【卒業まであと何日】というカウントダウンをする掲示物があったからわかった。黒板には【進級おめでとう】と書いてあるから、おそらく一学期の始業式なのだろう。
春の優しい風が教室の窓から吹いていた。その風にのって、桜の花びらが一枚入り込む。
転校生の女の子は、僕の左隣の席に座った。左側二列目の、一番後ろ。
よろしくね、でもなんでもいいから声をかけて緊張をほぐしてあげろよ、などと夢を見ている僕は思ったが、夢の中の僕はただ、ノートの隅に絵を描いていたのだった。