誰かのための物語
確かにそうだ。


私は、夢であの女の子から教えてもらった物語を書き写したにすぎない。


これは、私の物語じゃない。


これは、誰かのためにあるものなんだ。


「夢の中で女の子は、未来から来たって言ってたよね。

そして、

『未来で私はあなたに助けてもらうことになる』って言われたって」


「うん、そう言ってた」


「誰かの助けになるときは、どんな人にでもいつか訪れると思うんだ」


私はそのとき、立樹くんの言おうとしていることが理解できた気がした。


「それはつまり、主人公は、読んだ人全員っていうこと?」


「うん。

少なくとも僕は、そうだと思ってる。

華乃が夢の中で出会った女の子がこの物語の作者なんだとしたら、

彼女は「この物語の続きは自分で作ってください」っていうメッセージを、

君に伝えたかったんじゃないかな」


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