誰かのための物語
夢のとおりなのであれば、彼は私のことを忘れている。


事故で両親も亡くしているはずだ。


その事故はきっと、私が入院し始めた頃に起こってしまったんだろう。



あの日、サッカー中継で彼を見つけて夢の謎が解けたとき、私はすべてを理解した。



ーー彼は、約束を破ったわけじゃなかった。


私は、ひとり病室で、泣いた。


そしてひとしきり泣いたあと、前を向いた。









ーー大丈夫。





あなたの大切な記憶は、きっと戻るからね。






私が、協力するから。

右隣に座る彼に、私は心の中で語りかけた。



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