誰かのための物語
「あの……それ、やろうか?」
新学期が始まってから二週間ほどたったある日、転校生の私が彼に向けて初めて発した言葉だった。
正確に言えば、初めてではないけれど。
「え……! あ、いや、大丈夫! ……です」
彼は、私の申し出を断った。
夢でもそうだったから、わかってはいた。
なにが大丈夫なの、立樹くん。
彼は右手にギプスをはめている状態で、
模試の申込み用紙を切り離そうと苦心している。
涼しい表情をしているつもりだろうけど、私に
は彼が痛みとかやりにくさを我慢していることがわかった。
そんな姿を微笑ましく思ったけれど、そんな思いで彼を見ていることを悟られないように努めた。
彼は右手で紙を押さえ、左手で切り取った。
その間彼は、私の顔を見ることはなかった。
そういえば彼は、シャイなんだった。これは大変だと思った。
新学期が始まってから二週間ほどたったある日、転校生の私が彼に向けて初めて発した言葉だった。
正確に言えば、初めてではないけれど。
「え……! あ、いや、大丈夫! ……です」
彼は、私の申し出を断った。
夢でもそうだったから、わかってはいた。
なにが大丈夫なの、立樹くん。
彼は右手にギプスをはめている状態で、
模試の申込み用紙を切り離そうと苦心している。
涼しい表情をしているつもりだろうけど、私に
は彼が痛みとかやりにくさを我慢していることがわかった。
そんな姿を微笑ましく思ったけれど、そんな思いで彼を見ていることを悟られないように努めた。
彼は右手で紙を押さえ、左手で切り取った。
その間彼は、私の顔を見ることはなかった。
そういえば彼は、シャイなんだった。これは大変だと思った。