誰かのための物語
その日も、男の子は女の子の夢の中にいました。
 
ここは、とてもいごこちがよくて、男の子にとって学校よりも安心できるばしょに なっていました。苦手な大なわとびも、勉強もありません。
 
男の子は、今日ずっと気になっていたことを女の子に聞いてみました。

「ねえ、ぼくはきみになにをしたの。

〝ぼくの素晴らしいところ〟って、なに?」
 
女の子は優しくほほえんで、こたえました。

「あなたは、私にとって、さいしょで、さいごの人なの」


「さいしょで、さいご?」
 
男の子はまた女の子の言っている意味がわからなくて、首をかしげました。

「そう。あなただけが、わたしのことを助け出そうとしてくれたの。
じゃあこれから、 あなたの素晴らしいところの、ひとつめを教えるわね」
 

そう言うと女の子は、あれを見て、と言って男の子のうしろを指さしました。
 
男の子がうしろを振りむくと、女の子の指さしたほうに、一頭のイルカが泳いでいるのが見えました。


「あのイルカはね、昔、水族館にいたの」
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