誰かのための物語
そのとき、グラウンド中央から、Aチームのロングパスが飛んだ。


僕はそれを阻止しようとしたが一歩及ばず、パスを通してしまった。

けれどすぐにそれ以上自由に走らせまいと、相手にピッタリと張り付いて守り続けた。



長い距離を走ったあとなので、息が苦しい。

足がだんだん重たくなってくる。

だが、ここで力を抜けばたちまちドリブルでかわされてしまうと思い、足を動かし続けた。


一瞬、ボールを持っている相手が僕の後ろを見た。

激しい足音が近づいてくる。ものすごいスピードだ。


Aチームの選手が走り込んできているのを感じ、振り返る。



……相良だ!


走り込んでいる彼を味方のディフェンスも追ってはいるが、追いついていない。相良がボールを受け取ろうと僕の方へ走ってくる。


その瞬間、僕の目の前からパスが放たれた。
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