誰かのための物語
それと、なわの回る速さが同じでないことも理由だと思いました。



もしかしてと思い、男の子はまた、クラスのみんなに言いました。

「ぼくに、なわを回させてもらえない?」


縄をまわしたことなんてない男の子。それも、勇気のいるひとことでした。でも、やってみなければわからないと思ったのです。


クラスのみんなも、男の子の真剣な気持ちにこたえようとしてくれていました。


男の子は、反対側で回すクラスメイトにひとことなにかを言いました。そしてなわをもって、深呼吸をしました。


「よし。せーのっ」


イーチ、ニーイ、サーン……。

男の子は、自分のまわすなわの音を聞きました。

タン、タン、タン。


男の子は、よし、と思いました。

みんなが自分の前で、自分のまわすなわをリズムよくとんでいきます。


ロクジュイチ、ロクジュニ、ロクジュサン……。

全員で、れんぞくでとんだ数を数えました。


「すごい! いけるぞ!」
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