誰かのための物語
自分以外の人にノートを見せるなんて。



転校生の子といつの間に友達になっていたんだろう。


彼女は、僕のノートと僕を交互に見ては満面の笑みを咲かせて、子どもらしく足をパタパタさせた。



……この子には、見せてもいいと思えたんだね。よかったね。


僕は、子どもの頃の自分に語りかけた。



よかった。この頃の僕にも心を開ける人がいたんだ。


大切なのは友達の多さじゃなくて、ひとりでもこうやって自分をさらけ出せるような相手がいることだ。



そう、今の僕は実感している。


森下さんも、相良も。

友達ではないけれど、監督も。




僕はすがすがしい気分で夢から覚めた。
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