誰かのための物語
小さい頃によく行ったのなら、記憶のない小学生の頃にも行っているはず。
だから、ひとりではなく誰かと一緒に会話をしながら訪れることで、記憶が呼び覚まされるのではないか、というわけだ。
彼女は僕の隣に座ると、心配そうにこう尋ねた。
「ここまで来てもらってなんだけど……日比野くん、本当に大丈夫?」
「どうして?」
「今日の約束をしたあとに気付いたんだけどね、記憶が戻るってことは……
その……
事故の記憶も戻るってことで……」
そこまで聞いて、僕には彼女が心配していることがわかった。
「そういうことなら、心配はいらないよ。
確かに両親が死んでしまったことを改めて思い出すのはショックも大きいだろうけどさ。
でもいいんだ。思い出す覚悟はできてるつもり」
多くの人は、大切な人との思い出も、別れの記憶も、すべて抱えて生きている。
そのすべての記憶があるからこそ、できることがあると思う。
例えば、大切な人を、心から大切にするとか。
例えそれが、もう亡き人であったとしても。
だから、ひとりではなく誰かと一緒に会話をしながら訪れることで、記憶が呼び覚まされるのではないか、というわけだ。
彼女は僕の隣に座ると、心配そうにこう尋ねた。
「ここまで来てもらってなんだけど……日比野くん、本当に大丈夫?」
「どうして?」
「今日の約束をしたあとに気付いたんだけどね、記憶が戻るってことは……
その……
事故の記憶も戻るってことで……」
そこまで聞いて、僕には彼女が心配していることがわかった。
「そういうことなら、心配はいらないよ。
確かに両親が死んでしまったことを改めて思い出すのはショックも大きいだろうけどさ。
でもいいんだ。思い出す覚悟はできてるつもり」
多くの人は、大切な人との思い出も、別れの記憶も、すべて抱えて生きている。
そのすべての記憶があるからこそ、できることがあると思う。
例えば、大切な人を、心から大切にするとか。
例えそれが、もう亡き人であったとしても。