誰かのための物語
僕らは最後に公園に来ていた。

本当なら絵本をたくさん置いている本屋さんにも行く予定だったけど、美術館と庭園でどちらも長居してしまった。

彼女は、「本屋さんは、また違う機会に行こうね」と言ってくれた。


庭園を出る頃にはもう日が傾き始めていた。

公園のキャンバスは今、森下さんが着ているワンピースのようなオレンジ色に染まっている。

そういえば、かおるくんと一緒にあそこに夕焼け空を描いたこともあった。


ベンチに並んで腰を下ろすと、森下さんは早速、と言った感じで僕の方に身体を向けた。



ここで、夢の話を教えてくれるんだったよね、と目が言っている。

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