誰かのための物語
森下さんと別れてから、僕は振り返りさらに赤く染まった公園を見て、

小さい頃の自分が絵を描いている様子を思い浮かべた。



そういえば、夕暮れ時にここでよく絵を描いていたな。


父さんと母さんの影がだんだん長くなっていく中、

僕は夢中になってチョークを動かしていた。



そんなことを考えているとき、ふと、頭の中に両親以外の誰かが思い浮かんだ。




しゃがんで夢中に絵を描いている僕に、声をかけてきた女の子。



僕の知らない、僕と同じ年くらいの子だった。



話した内容まで覚えていないけれど、その子は僕の絵を褒めてくれたと思う。


話しかけられて、嬉しかった気持ちが残っている。




今日一日思い出の場所を回ったけれど、
結局、この公園が僕にとって一番思い入れのある場所なのかもしれないと思った。




小学校の頃は、ここでどんな思い出を作ったのだろう。



僕は公園をあとにし、じいちゃんの待つ家へと向かった。
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