誰かのための物語
「子どもの頃はみんな素直だよ。日比野くんは?なにか大切にしたりしなかったの?」

「うーん、僕は子どもの頃から超常現象みたいなのは信じてなかったから、そういうことはしなかったよ。


ただね、あのページの真似はした。

というか、両親にしてもらった」


「どのページ?」


僕は、その絵を頭の中でイメージした。


すごく、温かい気持ちになる一ページを。



「えっとね、夜寝るとき、男の子が布団の中で肘ついてさ、うさぎのための空間を作ってあげるページがあったんだ。


『うさぎのあな』とか言ってさ。その絵を見てね、


すごくいいなあって思ったんだ。

うさぎ、羨ましいなあって」


僕は両手で頭の上に三角を作り、布団をかぶるジェスチャーをして見せた。

それを見て彼女は「それで?」と言いながら目を細めた。

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