誰かのための物語

 終業式のあとも、サッカー部は練習を行った。

今日は、ずっとBチームでの練習だった。

僕は試合で感じた自分の課題に意識を集中させた。


自分のチームが攻撃に転じるとき、守るだけではなく僕もゴールに向かわなくてはいけないのだ。


その気持ちはあるのだが、技術がその気持ちに追いつかなかった。


ボールを奪っても、そのあとのパスがうまく通らない。ドリブルでも相手を抜けない。


そんな調子で僕は、チャンスを活かしきれずにいた。

Bチームはその日、得点を入れることができなかった。


「日比野、これからどうする?」


 練習終わりに相良が声をかけてきた。


「もうちょっと練習していこうかな」


「がんばるね」


相良はそう言いながらも、付き合うよ、と言ってボールを用意した。



「パスの練習だろ?」


「……よくわかるね」

 
相良には、なんでもお見通しだなあと僕は思う。
 
今日、あれだけ失敗していたんだから、当たり前か。

「まあね」


 
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