恋人は魔王様
くしゃり、と、そいつが私の髪を撫でた。

「金目当てだと言われたのは初めてだ。
 ユリアは面白い」

真紅の唇を歪めて、再び笑う。
今度は目まで笑っているようだったので、私は少し安心した。
どんなに美青年でも、笑えないような人ってちょっと淋しいもんね。



でも、私のこと面白いとかいう分類で処理されても困るんですけど。

すぅと目の前に黒塗りの車が止まった。

中からこれまたカッコイイ青年が降りてきて、ドアを開ける。


「あああああっ」

私はうっかりその青年を指差してしまった。

「ユリア、人を指差しちゃダメだって言われなかった?
 まぁ、そいつは人じゃないけど」

なんとなく気になる言葉を挟みながら『魔王様』が私を諭す。
でも、私はあまりにも動揺していたのでその言葉はスルーしてしまっていた。

「だって、昨日駅前であって変なこと言い出した人なんだもん。
 どうして?
 あなたの知り合い?」

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