恋人は魔王様
「うぉおおおおおおおっ」

この世のものとも思えない、おぞましい慟哭が、地の底から聞こえてくる。
それは、私の歩みとともに少しずつ少しずつ大きくなって。

私はいたたまれなくなって、足を止めた。

「……私を、何処に連れて行くの?」

「じゃあ、何に対して謝った」

冷たい声で、キョウが問う。
ここでこの手を放されて、置き去りにされたら私も発狂してしまう。

私は仕方なく、口を開いた。

「今日、友達に誘われて合コンに行った……こと」

「ゴーコン?」

およそ、千年前はおろか、百年前でも使われなかったであろう言葉に、キョウは一瞬首を傾げた。

何ゆえ、私はこの切羽詰った状態で、合コンについて説明なんぞしなければならないのかしらっ。

己の境遇を嘆きながら、仕方がなく言葉を探す。

「合同コンパ。えっとね、男女が集まって一緒に食事をするの。基本的には友達の友達がたくさんいたりとか。そんな感じで」

「何のために?」

「出会い?」

「出会い、ねぇ」

すぅと、キョウの瞳が細くなる。
絶対こいつ、合コンが何か知っていて私に説明させたに違いないっ!

この、ロクデナシ!!

心でぼやきながらも、慌てて言葉を紡ぐ。

「ああ、だから違うのっ。
私は誰かと出会いたかったわけじゃなくてね。
あのね、私の友達が、どうしても私と食事したいって言う人が現れたからとりあえず食事だけでも会ってみないかって言われて、断りきれなくて、だから……。
その……。
ゴメンナサイ」

まるでこれでは浮気が発覚したみたいだ。
別に、何もしてないのに。
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