恋人は魔王様
「で、桧垣をこのままどうするの?」

私は首を傾げた。
ここで、このまま殺してしまうというのかしら?

いや、死んだ後の人間が魔界に来るのよね?

むむ。
よく分からないわー。

私の視線を受けたキョウは、金色の瞳を煌かせていった。
どのタイミングで瞳の色が変わるのか全く分からないけれども、この、金貨を思わせるような煌びやかな瞳も、腹立たしいほどキョウにはよく似合っている。

本当にこれが芸能人だったら、今頃私はファンクラブに加入していたに違いない。

「さぁ、どうしよう?
俺の彼女をホテルに誘った罪は、軽くはないよ」

キョウは冷たい笑いを浮かべた。

え?
私は耳を疑う。

「……あの、桧垣を浚ったのは殺人を犯したからなんじゃないの?」

「嫌だなぁ、ユリア」

細く冷たい指が私の頬に触れる。

「毎日どれだけ殺人事件が起きてるか知ってる?
そいつら全部浚っていくなんて面倒な仕事、俺が引き受けるわけないだろう。
これでも一応多忙を極める魔王様なんだから」

どうでもいいけど、自分に【様】をつけると頭悪く見えましてよ。

と、突っ込みたいところだが、実際のところこの男に関しては【魔王様】と自ら名乗ってもしっくりくるほどイけてるのだから、突っ込みようもない。

悔しいけれども。

「あまつさえレイプどころか死んでもいいとまで言い放ったんだからな、アイツは」

ゾクリ、と背中を凍らせるような冷たい声が地を這う。
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