恋人は魔王様
私は何か違和感を感じて記憶をたどった。

「キョウ、いつから私を見張ってたの?」

キョウは黒い瞳で私を見た。
恋人を甘く見つめる情熱的な眼差しだ。

やはり、どのタイミングで目の色が変わっているのかまるで分からない。
瞬きの瞬間、なのかしら。

「見張るなんて、とんでもない。
好きな人からは、24時間片時も目を離したり出来ないものだよ」

そ、それはストーカー宣言?!

私は自然に一歩後ずさってしまう。

「じゃあもう少し早く助けてくれても良かったじゃないっ」

キラン、と、効果音が聞こえてきそうなくらい、鋭くキョウの瞳が光る。
細い指先が誘うように私の頬をくすぐった。

「それじゃ、ユリアが反省しないでしょう?」

しなくて結構!

「可愛い子が素直になるように調教するのも恋人の大事な務め。
これでも、心を痛めてたんだよ」

嘘っぽい!
いくらなんでも、嘘っぽ過ぎる!!

昼ドラのヒーローよろしく安っぽい台詞が、艶やかな声で私の耳に注がれていく。



でも、まぁ、一番信じられないのはその安っぽい台詞を聞いて、キュンキュンと甘い疼きをたてている私の心臓なんだけどね。
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