恋人は魔王様
『魔王様』に促されるままに車に乗り込む。
彼はゆったりした態度で微笑んだ。


「俺の部下だ」

部下……やっぱりこの人ホストかしら?
この若さで頂点まで上り詰めて、だから部下とかいたりするのかしら?

美形で金持ちと言ったらホストしか思いつかないあたりに、想像力の乏しさが伺えますが。




いまいち、何も状況が飲み込めない私に向かって、彼は言った。

「人を簡単に殺してみたら、俺を魔王様だと信じるか?」

その声は、今まで聞いたどの声より低く冷たく、ぞっとする響きを持っていた。
思わず、ぶるぶるぶると私は首を横に振る。



私ってば、ものすごく美形だけど、サイコな何者かに捕まったのかもしれない。

『知らない人の車に乗ってはいけません』

いまさらそんな小学校の先生の言葉を思い出してみたところで、もう、手遅れでしかなかった。

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