恋人は魔王様
「だけどさ、人間界での罪は人間界で裁かれてしかるべき、じゃないかしら?」

私はうっかり本音を漏らした。

「ほほう」

と、キョウが形の良い目を眇めた。

「ほら、私の申したとおり。
ユリア様は探偵ごっこがしたくて仕方がないんですよ」

ジュノが心なしか胸を張っている。
ご主人様に褒められたくて仕方がない犬のようだ。

「なるほど。
いいよ、ユリア。そんなに探偵ごっこがしたいなら。
ゆっくりやってみればいい」

艶やかな唇が甘い笑みを象る。
何故だか私に今、思いっきり上から目線の、許可が降りてきたのだ。

いやいやいやいや。
なんでそうなる?!

私は頷くこともかぶりを振ることも出来ずにしばし、頭を整理した。

ただ一つ分かることは、私がここで頷かなければ人知れず魔界で桧垣は壊されてしまうであろうってことだけ。


そりゃまぁ。
人を殺した上、私さえをもホテルに連れ込み、かつ殺そうとまでした罪は大きいし、同情のしようはない。

それでも、渡辺先輩の事件は人間界できちんと解決しないと渡辺先輩浮かばれないんじゃなくって?

それに、何ゆえ私を殺そうとまでしたのか、それも一応知っておきたい。
なにせ、私と桧垣では接点なんて(私の知る限り)1ミリもないんだから。

「でも、やっぱり怖いわ」

殺人者をわざわざ人間界に連れ込む必要はないのかもしれない。
私は知らず、震える身体を自分で抱きしめていた。




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