恋人は魔王様
ツツと、キョウが指先で服の上から私の身体を撫でる。

「本当に情熱的だね、ユリアって。
もしかして人前でヤりたいタイプ?」

……いえ、そうでもなくて!!

私は赤面してかぶりを振る。

「違うの。
私、またこのまま帰ったらキョウと連絡取れなくなるじゃない?
それは」

……え?私、なんていおうとしてるんだろう。

慌てて口を噤む。

「それは?」

当然のように、キョウは言葉の先を促す。
仕方なく、先を続ける。

「それは、とても寂しいの」

がぁあああん!
自分で言葉を発しておいて、これほど衝撃を受けたことは人生であまりなかったことだ。

私は。
魔王などに逢えなくなって「寂しい」と思ってしまっているのだ。

嘘!?
いくら自分の口から出たこととはいえ、
なんていうか、
全面撤回しちゃいたいくらいに、恥ずかしい。

よく、政治家が過去の発言を真顔で撤回するじゃない?!
口から出た言葉なんて、絶対に取り消すことなんて出来ないのに、だよ。
良い年した大人が、馬鹿みたいなことやってるなーって、いっつもニュース見ながら思ってたんだけどさ。

まさに、今、出来ることなら、私もそれをやっちゃいたいわ。
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