恋人は魔王様
そりゃ、本当はもっと気になることがあって。

例えば、人間と悪魔の間に子はなせるのか、とか。
ハーフになったそのものは一体何処で暮らすのか、とか。
そうなった場合、私は人間界に存在し続けられるのか、とか。

もちろんもちろん。
ちゃんと聞いておくべきことなんだろうけれども。


でも、実のところは怖くて聞けなかった。

私は悪魔を産むとか。
今後一生魔界で暮らすほか無い、とか。

言われたらと思うと。

怖くて。

口を閉じた私を、キョウはどう理解したのか。
涼しい目元をそのままに、口許に甘い笑みを浮かべてその指先でそっと私の頬に触れた。
それは、まるで私の不安に染まっていく心を見透かし宥めてくれるかのように、優しいものだった。


でも。
宥めなきゃなんない状態に持ってきたのは、他の誰でもない、アナタサマですよね?

と、悪態の一つもついてみたくなる。

とはいえ、やっぱりそんなこと、怖くて出来ないんだけれども。


「何かあったら、何も無くても、この指輪に囁いて。いいね?」

ほとんど暗示に掛けられたかのように、そのテノールの声に私はこくりと頷いた。

「私は人間としてユリア様の近くにおりますので、ご心配なく」

ジュノが言う。

……ど、どういう意味?!



私に問う暇も与えず、パチリ、と、キョウの指が鳴り、次の瞬間私は自分の部屋へと移動していた。


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