恋人は魔王様
……なんだか、これ以上何も聞きたくない……

私は、出来ることならここから逃げ出したくなった。
ちらり、と、視線を指輪に投げる。

キョウに頼ったら助け出してくれるかしら。

そんな思考になっている自分にはっとした。

駄目駄目。
何が哀しくて、困ったときに魔王なんかに頼ろうとしているのかしら、私。

どう考えても、世界で頼ってはいけない人ベストテンにランキングされてるわよね。
悪魔にだけは魂を売るなって言う、格言があるくらいだし。

……って、そんな格言、なかったっけ?
まぁいいや。

私の中の葛藤など、当然のように無視して、重っ苦しい告白が、まさに今始まろうとしていた――


「あ!二時間経過した」

その緊張感をものともせずに、軽い口調でジュノが沈黙を破った。

「あのね、ジュ、じゃなかったフナコシさん。
三分間クッキングだって、実際は三分間で出来るわけじゃないの。
二時間のドラマだって同じことよ」

私も場違いな言葉で説得を試みてみる。


凍り付いていた部屋の空気が、僅かに、揺らめいた。
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