恋人は魔王様
高級車の中で、サクッと昨日のことを回想した私だが、それでもやはり現状を一切把握出来ない。

起承転結の配慮がまるでない、理解出来ない芝居を無理矢理見せつけられているようだった。

あるいは、見るに耐えない芸人コント、と例えても良い。


できればこの辺で退場したいんですけど……


とはいえ、私の左で威圧感たっぷりに座っている美青年が私に途中退場を許してくれるとも思えなかった。

私と目が合ったそいつは妖艶に微笑むと当然のように私を抱き寄せた。



エーン!
せめて名前と目的だけでも教えて下さい〜!

自分の所有物と言わんばかりに『魔王様』が私の髪に軽いキスを落とす。


……キュン
と、勝手に私の心臓が音を立てた。



いやいやいや(汗)
流されちゃダメ!
落ち着け、百合亜!



私は必死に自分を押し留めていた。
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