恋人は魔王様
キョウは最初に、サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会……とかなんとかいう、日本人の私が口にすると舌を噛みそうになる名前の教会に連れて行ってくれた。
ヴェロッキオ作のブロンズ製「バルトロメオ・コッレオーニの騎馬像」が私たちを出迎えてくれる。日本では見たことも無いような、深く青い空の下で見るブロンズ像は、一際美しく輝いていた。
私が立ち止まってそれをうっとり見ていると、キョウに
「そんなに一つ一つをゆっくり堪能しているほどの時間はない」
と、冷静に諭されたので、仕方なく導かれるまま圧倒されるほど大きな教会の中へと足を踏み入れる。
そこは、ベネチアのメインであるサン・マルコ広場や、先ほどいたリアルト橋から少し離れているからか、観光客はごった返すほどにはいなかった。
教会の中はやはり、おごそかな空気が漂っている。
「ねぇ、悪魔ってこういう空気平気なの?」
思った瞬間口にするのが私の悪い癖だ。
しかし、キョウは軽く眉を顰めただけで文句を言ったり怒ったりはせず、静かな声で
「そういうの、偏見とか差別って言うんじゃないの?」
と、ぼやいただけだった。
うーん、私の認識の偏見とか差別とかとはまるで違うんだけど。
まぁ、実際平気そうなので仕方がない。
キョウは、私の手を引きながら、ジョヴァンニ・ベッリーニの「聖ヴィンチェンツォ・フェッレルの祭壇画」や、ピアツエッタの天井画「聖ドミニコの栄光」、ヴェロネーゼの「受胎告知」などを私に見せながら、凄腕の旅行会社の添乗員の如く、ざっと説明してくれた。
大声を出せないのは分かるけど、説明するたびにその綺麗な唇を私の耳のすぐ傍まで寄せるのは、絶対にわざと、だよね?
その眩暈がするほど綺麗な顔で、キス出来そうな近さまで迫られるたびに、私の心臓はドキドキバクバクキュンキュンと、派手にうずいて仕方がない……のだ。
あ、あれ?
いえいえ。
べべべべべ別に、キョウが語学堪能で博識だからって、それにときめいたりはしてないんだから。
そういうのって、ダメ、絶対!
ヴェロッキオ作のブロンズ製「バルトロメオ・コッレオーニの騎馬像」が私たちを出迎えてくれる。日本では見たことも無いような、深く青い空の下で見るブロンズ像は、一際美しく輝いていた。
私が立ち止まってそれをうっとり見ていると、キョウに
「そんなに一つ一つをゆっくり堪能しているほどの時間はない」
と、冷静に諭されたので、仕方なく導かれるまま圧倒されるほど大きな教会の中へと足を踏み入れる。
そこは、ベネチアのメインであるサン・マルコ広場や、先ほどいたリアルト橋から少し離れているからか、観光客はごった返すほどにはいなかった。
教会の中はやはり、おごそかな空気が漂っている。
「ねぇ、悪魔ってこういう空気平気なの?」
思った瞬間口にするのが私の悪い癖だ。
しかし、キョウは軽く眉を顰めただけで文句を言ったり怒ったりはせず、静かな声で
「そういうの、偏見とか差別って言うんじゃないの?」
と、ぼやいただけだった。
うーん、私の認識の偏見とか差別とかとはまるで違うんだけど。
まぁ、実際平気そうなので仕方がない。
キョウは、私の手を引きながら、ジョヴァンニ・ベッリーニの「聖ヴィンチェンツォ・フェッレルの祭壇画」や、ピアツエッタの天井画「聖ドミニコの栄光」、ヴェロネーゼの「受胎告知」などを私に見せながら、凄腕の旅行会社の添乗員の如く、ざっと説明してくれた。
大声を出せないのは分かるけど、説明するたびにその綺麗な唇を私の耳のすぐ傍まで寄せるのは、絶対にわざと、だよね?
その眩暈がするほど綺麗な顔で、キス出来そうな近さまで迫られるたびに、私の心臓はドキドキバクバクキュンキュンと、派手にうずいて仕方がない……のだ。
あ、あれ?
いえいえ。
べべべべべ別に、キョウが語学堪能で博識だからって、それにときめいたりはしてないんだから。
そういうのって、ダメ、絶対!