恋人は魔王様
「魔王様、どちらに向かいますか?」
運転席に戻った部下が聞く。

これは手の込んだ芝居なの?
そして、私は事情を知らないエキストラ。

「最初はユリアのご両親に挨拶だろう」

待て待て待て。

何故そうなる?

何一つ順序を守ってないのに、そこだけ余計な手順を踏もうとするわけ?


「あの」


唇を開いた私を『魔王様』が見つめて、ふわりと笑った。


「大丈夫。挨拶がすんだらすぐに抱いてやるから。

それとも、待てない?」


真剣な眼差しで、不埒な発言するの、止めていただけないでしょうか……


恥ずかしさのあまり、そうも言えず


「いえ、あの、全体的に勘違いなんですけど」


と、半ば棒読みで言うのが精一杯の私であった。




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