恋人は魔王様
あの、冗談と笑いで満ち溢れていたジュノとは別人のような変貌ぶりに、私も言葉を失う。
だけど。
なんて言ったら良いのか。
下手にかばい立てすると、キョウが本気で怒り出さないとも限らないし。
緊張感の糸が張り巡らされたような部屋で、私は指先一つも動かせずに固まってしまう。
ふっと、それを断ち切るように平然と笑ったのはキョウだった。
「いいよ、別に。
マリアは俺が説明できないことを、毎回毎回懲りずに伝えてくれるから、な」
「……どうして、悪魔なのにマリアって言うの?」
他に聞きたいことは山ほどあったのに、私はそうやって聞いていた。
つい今しがた見た、教会のことが頭にあったからかもしれない。
すい、と、キョウがその目を眇めた。
一瞬、淋しさがそこに紛れているようにも見える。
彼は、何かを祈るような顔で息を吸って、そして口を開く。
「もちろん、マリアというのは偽名だ。
彼女が好き好んで使っているものだ。
……マドンナ・リリーの近くにいつも居るからな、聖母マリアは」
マドンナ・リリー?
私がぽかんとしているのに、胸の奥で線香花火が燃え尽きるときのようなじりじりした何かを感じてしまう。
でも、『私』には覚えがない。
マドンナ・リリー……
だけど。
なんて言ったら良いのか。
下手にかばい立てすると、キョウが本気で怒り出さないとも限らないし。
緊張感の糸が張り巡らされたような部屋で、私は指先一つも動かせずに固まってしまう。
ふっと、それを断ち切るように平然と笑ったのはキョウだった。
「いいよ、別に。
マリアは俺が説明できないことを、毎回毎回懲りずに伝えてくれるから、な」
「……どうして、悪魔なのにマリアって言うの?」
他に聞きたいことは山ほどあったのに、私はそうやって聞いていた。
つい今しがた見た、教会のことが頭にあったからかもしれない。
すい、と、キョウがその目を眇めた。
一瞬、淋しさがそこに紛れているようにも見える。
彼は、何かを祈るような顔で息を吸って、そして口を開く。
「もちろん、マリアというのは偽名だ。
彼女が好き好んで使っているものだ。
……マドンナ・リリーの近くにいつも居るからな、聖母マリアは」
マドンナ・リリー?
私がぽかんとしているのに、胸の奥で線香花火が燃え尽きるときのようなじりじりした何かを感じてしまう。
でも、『私』には覚えがない。
マドンナ・リリー……