恋人は魔王様
でも、リリーがユリの花を指す事は分かる。

だとしたら、マリアの話は実話で。
キョウは、元人間の生まれ変わりの悪魔で。
私は、元、ユリの花だって……こと?!

突拍子もない話は、御伽噺のようでやはり、自分のこととしては受け入れがたかった。


部屋を纏う不気味な静寂をクツクツという低い笑い声が、簡単に破る。

「いや、ユリアには難しいことだったな。
気にするな」

いうと、やや乱暴に私の髪の毛をくしゃりと撫でた。
その顔には、見慣れた『魔王様』の色しか残っていない。
つまりは、傍若無人で、唯我独尊って言葉を形にしたような姿ってことなんだけど。


「で、探偵ごっこは片がついたのか?」

キョウは何もなかったように、突然話を元に戻した。
ベネチアにすら、行く前に。
マリアにすら、捕まる前に。

「それが、もう少しで犯人が告白するところで、時間が切れちゃった」

言葉を選んでいるジュノに代わって、私が言う。

「ウルトラマンみたいだな」

と、場違いな固有名詞まで出してきて、キョウが楽しげに笑った。
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