恋人は魔王様
クツクツと愉しそうに『魔王様』が笑う。
そして、繊細な長い指で私の髪を弄びながら

「ユリアは照れ屋なんだな」

と、ひとりごちていた。



だーかーらー!
私が照れ屋なら、あんたは勘違い野郎だっつーのっ!


話が通じず、私は頭を抱える。



「ユリア様、無駄ですよ」
運転手が涼しげに言った。
「無駄?」

意味が分からず聞き返す。

「先程、お二人は契約の接吻を交わされたじゃないですか」

キスを交わしたっていうか、あれは逃げようのない、いわば事故!


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