恋人は魔王様
嫌だ、嫌だ、嫌だ。

どうしてだろう。
悪魔に逢ったときでさえ、こんなに不安は感じなかった。

でも、颯太の壊れた笑顔を見てると感じちゃう。

私の世界が終わっちゃう。
絶望感で包まれる。

お願い。
助けて――っ



私は。
人間に殺されそうになって、
魔王に命を救ってくれと、
必死になって懇願していた。



その、矛盾について考察している時間なんて、コンマ1秒もなかったと推察していただきたい。


「ねぇ?
泣いてんの?」

がつり、と、颯太の手が、私の顔の右隣に伸びて、そのさびついた手すりを握る。

「泣いてるわけ、ないじゃん。
あんたのことなんて、怖くもなんともないわよッ!」

どうしてこんなときでも、言葉を返そうとするのか。
自分の律儀さに呆れてしまう。

「だよね?
僕、結構モテるんだよ?
抱かれたい男校内ランキングナンバーワン」

……そのアンケートとった責任者、出来たらここに今すぐ連れてきて欲しい……
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