恋人は魔王様
「だからさ、はっきり言ってあんたに断られたのは、予想外って言うか、屈辱?」

屈辱かどうか、私に聞かれても困りますけど。

私は言葉を返せず、仕方がないので真っ直ぐに颯太の瞳を見返す。
太陽の光を浴びて薄い茶色を帯びるその瞳は、常人のそれとは明らかに違う感じで。
真っ直ぐなのに、歪みを帯びて私を見ていた。

「渡辺に告ったのはさ、駒木なんかと不倫してるて言うからさ」

……はぁ。
なんだか重たそうな告白を耳にしながら、私の脳裏にふと、『最後の話をするときは切り立った崖の上だと相場が決まってるんだ!』と騒いでいたジュノの言葉が甦ってきた。

後一歩で転落する、という意味では学校の屋上も大差ない。

「あんなおっさんに弄ばれるんだったら、俺と付き合ったほうがいいに決まってるよね?」

その、壮大な自信はどっから出てくるのかと、私は開いた口が塞がらない。

「なのにさ。
俺の誘いを断った挙句、アイツの子を妊娠したとか言って俺に相談に来るんだぜ?
ばかばかしくて仕方ない」

ククク……っと、颯太は肩を揺らして笑い出す。

そ、そんなに面白いところあったっけ?今の話に。
私とは笑いのツボが180度ずれているに違いない。
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