恋人は魔王様
「だからさ、言ってやったの。わざと亮介に聞こえるところで。
渡辺が俺の子供を妊娠したってね」
人間のはずの颯太だが、今は、悪魔のように壊れた笑いを顔全体に浮かべていた。
私は身の毛がよだつ思いで、ただ、それをこれ以上刺激しないように見守るほかない。
「そうしたら、アイツ。
簡単に罠にかかりやがった。
我が弟ながら情けないほどの単細胞だ。
で、何したと思う?」
「……さぁ?」
予想さえつかず、私は首を傾げる。
しかし、くわぁっと、颯太の目が見開かれ、私の首に手をかけ蛇の如く強い視線でにらみ返す。
「うううううっ」
息がすえない苦しさに、思わずうめく。
めりめりと、男の手が私の首へとのめりこんでいく。
「考えろよ」
こく、こくと、動かない首で無理矢理頷く。
……っていうか、目だけで頷いたのかもしれない。
とにもかくにも、颯太が手を放してくれた。
私は酸素を求めて、金魚みたいに幾度も大きく喘ぐ。
とにかく何か、答えなきゃ……
「渡辺先輩に、妊娠してることを言いふらすって言った、とか?」
「はずれー」
ククク、と、さらに颯太が笑う。
ああ、もう。
キョウは、私を助けに来る気はないのかしら?!
そう、脳内で喚いて……。
本当にそうなのかもしれない、と、思って急にズキンと心が痛んだ。
マドンナ・リリーの記憶が戻らない私になんて、用がないのかもしれない……。
人間だってこんなにおかしな思考回路になれるんだもん。
悪魔なら、ましてや、魔王だったら。
なおさら、だよね。
渡辺が俺の子供を妊娠したってね」
人間のはずの颯太だが、今は、悪魔のように壊れた笑いを顔全体に浮かべていた。
私は身の毛がよだつ思いで、ただ、それをこれ以上刺激しないように見守るほかない。
「そうしたら、アイツ。
簡単に罠にかかりやがった。
我が弟ながら情けないほどの単細胞だ。
で、何したと思う?」
「……さぁ?」
予想さえつかず、私は首を傾げる。
しかし、くわぁっと、颯太の目が見開かれ、私の首に手をかけ蛇の如く強い視線でにらみ返す。
「うううううっ」
息がすえない苦しさに、思わずうめく。
めりめりと、男の手が私の首へとのめりこんでいく。
「考えろよ」
こく、こくと、動かない首で無理矢理頷く。
……っていうか、目だけで頷いたのかもしれない。
とにもかくにも、颯太が手を放してくれた。
私は酸素を求めて、金魚みたいに幾度も大きく喘ぐ。
とにかく何か、答えなきゃ……
「渡辺先輩に、妊娠してることを言いふらすって言った、とか?」
「はずれー」
ククク、と、さらに颯太が笑う。
ああ、もう。
キョウは、私を助けに来る気はないのかしら?!
そう、脳内で喚いて……。
本当にそうなのかもしれない、と、思って急にズキンと心が痛んだ。
マドンナ・リリーの記憶が戻らない私になんて、用がないのかもしれない……。
人間だってこんなにおかしな思考回路になれるんだもん。
悪魔なら、ましてや、魔王だったら。
なおさら、だよね。