恋人は魔王様
「アイツはさ、渡辺の身辺調査を開始したんだ。
で、駒木との不倫の情報を掴んだ。
それでさ。
駒木の奥さんのところに、わざわざ伝えにいったんだぜ。
自分の夫が学校の生徒と不倫していて、その不倫相手は別の男の子供を孕むような淫乱女だってな。その別の男が俺だってことは、何故か伝えなかったみたいなんだけどさ。」

何がおかしいのか。
颯太の爆笑はさらに続く。

よっぽど面白い芸人に出くわしたときでも、私はこれほど笑えないかもしれない。
そう思うくらいの、壮絶な笑い顔。

「そしたらさ、奥さんも奥さんで。
まず、そんながせっぽい情報を鵜呑みにするほうがどうかしてんだろ?
その時点で、かなり知能が低いよなー。猿並?
しかも、だんなが不倫してるんだからさ、まずはだんなを責めるべきだろ?
なのに、渡辺のことを調べ上げて、陰湿に責め始めたらしいよー。
で、その結果が、失意の飛び降り自殺ってわけ。
どうよ?」

まるで、ブランドモノの時計を見せびらかして、自慢するかのようにたからかと、「どうよ?」と聞かれた私は面食らう。
でも、何か返さなきゃ。
絞め殺されちゃう!!

背中がぞっと粟立って、考える前に口を開いていた。

「いろんな意味ですごいと思う」

「だろ?」

その言葉は、幸いにも正解だったみたいで。
颯太は肩を揺らして笑っていた。

そうして、颯太は慣れた手つきで私の顎を持ち上げる。

「俺の誘いを断ったらそうなるってこと。早乙女百合亜は馬鹿じゃないから分かるよね?」

っていうかさ、コイツ。
私に振られる前に、とっくに渡辺先輩にも振られてるじゃない?!

頭悪いのはテメェだろ!


ああ、もう。
ワケワカンナイ。


もう、限界。
頭が痛い。



助けて!

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