恋人は魔王様
「お困りですか?
お嬢さん」
膝を震わせながら駅の構内に駆け込んだ私に、ナンパの要領で声を掛けてきたイケメンが、魔王様だった。
今日もまた、見事な黒いシャツ。
だが、ネクタイもなければ上着もない。
「も……お。
サイテイ」
私は息が整わないままにそう言い捨てると、傍目も気にせず、サイテイなはずの魔王の胸元に顔を埋めた。
ゆっくりと、キョウの大きな手のひらが私の頭を撫でる。
「仕方がないだろう?
俺は色々忙しいんだから」
「あのね。
恋人が絶体絶命の危機だったっていうのに、そんなの言ってる場合?
私が殺されちゃったら、どうするのよっ」
私は息を切らしたまま、喚きたてる。
「もう少しで絞殺か、あるいは屋上から突き落とされるところだったんだから!!
そのどっちでもないとしたら犯されてたわよ!!!
あの、悪魔以上に狂った人間にね」
くすり、と、キョウが笑って、テノールの魅惑的な声で言う。
「それはついに陥落したってこと?
それは良かった。じゃあ早速家に帰って子作りに励もうか」
……………!!!
「誰がっ」
考えるより先に、否定の言葉が口をついた。
顔をあげると、キョウがいつもの尊大な態度で私を見ている。
そして、ふわりと唇で笑みを象った。
「ユリアはそのくらい元気じゃないと、ツマラナイな」
くぅうううう~~~~!!
腹立つーーー!!!
絶対に今度死に掛けたときには、悪魔でなく神様に助けを求めるんだから~~~~!!!
もっとも、また死に掛けるなんて、ゴメンだけどね。
お嬢さん」
膝を震わせながら駅の構内に駆け込んだ私に、ナンパの要領で声を掛けてきたイケメンが、魔王様だった。
今日もまた、見事な黒いシャツ。
だが、ネクタイもなければ上着もない。
「も……お。
サイテイ」
私は息が整わないままにそう言い捨てると、傍目も気にせず、サイテイなはずの魔王の胸元に顔を埋めた。
ゆっくりと、キョウの大きな手のひらが私の頭を撫でる。
「仕方がないだろう?
俺は色々忙しいんだから」
「あのね。
恋人が絶体絶命の危機だったっていうのに、そんなの言ってる場合?
私が殺されちゃったら、どうするのよっ」
私は息を切らしたまま、喚きたてる。
「もう少しで絞殺か、あるいは屋上から突き落とされるところだったんだから!!
そのどっちでもないとしたら犯されてたわよ!!!
あの、悪魔以上に狂った人間にね」
くすり、と、キョウが笑って、テノールの魅惑的な声で言う。
「それはついに陥落したってこと?
それは良かった。じゃあ早速家に帰って子作りに励もうか」
……………!!!
「誰がっ」
考えるより先に、否定の言葉が口をついた。
顔をあげると、キョウがいつもの尊大な態度で私を見ている。
そして、ふわりと唇で笑みを象った。
「ユリアはそのくらい元気じゃないと、ツマラナイな」
くぅうううう~~~~!!
腹立つーーー!!!
絶対に今度死に掛けたときには、悪魔でなく神様に助けを求めるんだから~~~~!!!
もっとも、また死に掛けるなんて、ゴメンだけどね。