恋人は魔王様
そうだそうだ、コイツは魔王で。
人間界の私なんかと恋人になんかなれるはずもなくて。

だからこうやってすれ違い続けるしかなくて。

……どうして。

私の瞳からまた涙が溢れる。

……ただ、助けたかっただけなのに。

この想いは、さっき見た夢のせいなのか。
頭の中に宿り、時々声を聞かせる『マドンナ・リリー(仮)』のせいなのか。

区別もつかないのに、何故か私の心臓が鷲掴みにされたみたいに酷く痛んで、涙が溢れてしまうのだ。

……変なの。

「まだ朝には早い。
ゆっくり寝るといい。
それとも、ゆっくり寝るほかないようなこと、してあげようか?」

最後の一言に、下卑た笑いを含んで、キョウが問う。

「……結構ですっ」

私は涙を拭って、拒否する。
もっとも、疲れ果てた彼にそんな元気があるのかどうかも怪しいものだけど。

「じゃあ安心してお休み。
ママにはメール打っておいたから」

本当、全体的に出鱈目なくせに、変なところ律儀なんだから。


私が泣き止む前に、背中から寝息が聞こえてきた。
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