恋人は魔王様
「百合亜ちゃん?紅茶冷めるわよ」

私が唖然としている間に、驚きの情報を与えた張本人は、何食わぬ顔でご自慢の紅茶をジュノに振舞っていた。

「いやいやいやいや。
ねぇ、私、いつキョウ……彼と別れたの?」

確実に変な質問だというのは分かっていたが、聞かずにはいられない。
ママは私の代わりに涙ぐんでくれた。

「まぁ。
可愛そうに。失恋のショックで混乱してるのね。
学校には風邪で休むって連絡してきてあげるわ」

そういって家電(いえでん)に向かうママの隙を見て、ママのケータイを見る。

メール、メール、っと。


+++++
いつもお世話になっております。
京極です。
突然ですが、百合亜さんと今までのようにお付き合いするわけには
行かなくなってしまいました。
また、時機を見てご挨拶にお伺いする所存ではございますが、
とりあえずお知らせまで。
尚、季節柄ご自愛下さい。
+++++




えーっと、この中途半端に丁寧なメール文章は何なんでしょうか?!

今までのように付き合うわけには行かないって……。

なんで?

私は、キッとジュノを睨む。

「ねぇ、何か知ってるわよね?」

高圧的な態度はきっと、この日のために学んだに違いない。
そのくらいの勢いで、私はジュノに問いかけた。

まぁ、そんな私の着ているものがうさぎのプリントの入ったピンクのパジャマってことは、ご愛嬌ってことで。
< 177 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop