恋人は魔王様
しかし、ジュノは優雅に微笑んでいる。

「ダージリンも、マイセンで頂くと一味違うね。
まろやか感が増してくる」

などと、いっぱしの評論家気取りの言葉を口にして。

「いや、あの、えっと。
ジュ……フナコシさん?
今日はどのようなご用件で?」

「ユリア様のお望みどおり、カバンを届けに来たんだよ。
折角通学に間に合う時間にやってきたのに、今日はサボるの?」

「残念だけど、そうなりそうね」

ジュノはいつもの感じで言葉を運ぶ。
私は仕方なく向かいに座り、ダージリンを味わった。

「良かったー。
昨日の報告、しようと思って。
魔王様はお忙しいみたいで、全然連絡が取れないんですよねー」

執事のクセに(いや、本当の立場が何かは知らないけれど)それでいいの?っていうくらい余裕な態度で、ジュノが言う。
もっとも、魔王様と言う時に言葉遣いが丁寧になるのは癖のようだ。

「連絡、取れなくていいの?」

「いいんです、いいんです。
取れないってことは、今は用がないってことですから。
ねえ?」

ねえ、とか、そこらのアイドル顔負けの、ものすっごく眩しい笑顔で言われても。
知らないってば!!

全然わかんないうちに、勝手に恋人になった挙句、勝手にどっかに行っちゃう様なヤツの事なんて、私が知るはずないじゃない。

「とりあえず、昨日の話がしたいので着替えてきてもらってもいいかな?」

あ、やっぱりそうよね。
さすがにこの、うさぎのパジャマじゃ視線のやり場に困るよね……

「ああら、お部屋に上がってもらえばいいじゃない」

……
もちろん、ママの言葉は我が家では絶対。
ママは、男女問わず美形に対して警戒心がない。そして、甘いのだ。
< 178 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop