恋人は魔王様
「で?」

自分が発した一言に、昨日のキョウの言葉を思い出す。
私はどうしてあの時振り向いてキョウの姿を見なかったのだろう……。

後悔をぎりと噛み締める。否、後悔なら後でも出来る。
今はとりあえずジュノの言葉に耳を傾けなくては。

「にやりと笑ったんだ。
あれだねー、きっと悪魔的な笑顔って言うのは。人間にぞっとするなんて、ちょっと不覚」

と、こちらはアイドル的笑顔を浮かべた本物の悪魔。



以下、ジュノの話を纏めるとこういうことになる。


++++++++++

『早乙女百合亜は無事なんだな』

悪魔的な笑顔を浮かべた颯太が確認する。
無事、が指す具体的な事実が分からずに、ジュノは頷くことも首を横に振ることもしなかった。(つまり身体的には無事に見えたが、精神的ダメージはジュノには計り知れなかったということらしい。変なところが律儀なのはキョウに似てる……って、私なんでまたキョウのこと思い出しているんだろう……)

『亮介は?』

『罪の意識に苛(さいな)まれて、部屋でぐじぐじしてるんじゃね?
まぁ、アイツ昔から弱いし』

『それはアンタも同じだろう?』

びしり、と、ジュノが言う。
その笑顔、その口調。
ジュノから見ても、颯太がもうただの人とは違うということはよく分かった。

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