恋人は魔王様
『最期に話があるって……どういうことだよ』
亮介の言葉に、颯太も首を捻るほかない。
ま、ジュノがそういう嘘でもって亮介を呼び出したってことだ。
『……お前、家から出れるんだな』
颯太の顔に、再び壊れた笑顔が浮かぶ。
『……もう、兄さんに憧れるのは止めるんだ……』
ぐっと拳を握った亮介がかすれた声でそういった。
その顔は何日も泣きはらしたためか、元の悪くない顔が台無しになるくらいに腫れていた。
『そう』
クツクツと颯太が笑う。
『俺なんて、最初っから憧れる価値ねぇよ』
『んなことあるかよ!
ずっとなー、生まれたときからお前と比べられ続けてきた俺の気持ちなんて、兄貴に分かるはずがないっ』
悲鳴に似た、叫び声。
良く出来る兄、それに比べて不出来な弟。
一度貼られたレッテルは少々のことでは覆されない。
バレンタインデーに山ほどチョコレートを貰う兄、それを横目でうらやましがる弟。
運動会のマラソンで一位になる兄、二位を取った弟。
生徒会長に簡単になる兄、どんなに頑張っても副会長の座が精一杯の弟。
昔からずっとそうだった。
と、涙ながらに恨みがましく過去を語る亮介。
『だから、アンタが抱いた女を抱けば、俺にも何か分かるかと思って』
その、ぶっ飛んだ思考回路はさすがにジュノには理解できない。
(もちろん、話を聞いている私にも)
『んなわきゃねぇだろ』
実の兄貴にすら、その思考回路は理解してもらえなかった。
……こんなときですら。
亮介の言葉に、颯太も首を捻るほかない。
ま、ジュノがそういう嘘でもって亮介を呼び出したってことだ。
『……お前、家から出れるんだな』
颯太の顔に、再び壊れた笑顔が浮かぶ。
『……もう、兄さんに憧れるのは止めるんだ……』
ぐっと拳を握った亮介がかすれた声でそういった。
その顔は何日も泣きはらしたためか、元の悪くない顔が台無しになるくらいに腫れていた。
『そう』
クツクツと颯太が笑う。
『俺なんて、最初っから憧れる価値ねぇよ』
『んなことあるかよ!
ずっとなー、生まれたときからお前と比べられ続けてきた俺の気持ちなんて、兄貴に分かるはずがないっ』
悲鳴に似た、叫び声。
良く出来る兄、それに比べて不出来な弟。
一度貼られたレッテルは少々のことでは覆されない。
バレンタインデーに山ほどチョコレートを貰う兄、それを横目でうらやましがる弟。
運動会のマラソンで一位になる兄、二位を取った弟。
生徒会長に簡単になる兄、どんなに頑張っても副会長の座が精一杯の弟。
昔からずっとそうだった。
と、涙ながらに恨みがましく過去を語る亮介。
『だから、アンタが抱いた女を抱けば、俺にも何か分かるかと思って』
その、ぶっ飛んだ思考回路はさすがにジュノには理解できない。
(もちろん、話を聞いている私にも)
『んなわきゃねぇだろ』
実の兄貴にすら、その思考回路は理解してもらえなかった。
……こんなときですら。