恋人は魔王様
……うーん、日本人でなくてもファミリーネームあると思うけど。

という突っ込みはおいておいて、私は口を閉じる。
これこそが、冒頭からずっと隠し続けていた私のコンプレックスその1なのだから。

簡単には言えない。

言えるもんですか。恥ずかしいっ

私は闇を携えた瞳を真直ぐに睨み返す。

車内に満ちる重たい空気……









「この、早いに乙女って書くのが、ユリア様の苗字ですか?
 なんて読むんです?」





…………

私の心情を微塵も慮らない様子で、運転手が口を開く。
しかも、空気すら読まない軽~い口調で。





私は出来ることなら今すぐに、家の前にでかでかと掲げてある大理石製の表札をぶち割ってやりたい、と心のそこから念じてみた。

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